2019年9月のお題「演じる」で書かせて頂きました。
スペース・改行・ルビを除く300字。
ジャンル:オリジナル(会話劇)
「ご存じ? 綾小路《あやのこうじ》の奥様が亡くなられたって」
「ええ。飼い犬に噛《か》まれたそうね。ドーベルマンだったかしら、怖い顔の。
奥様もお可哀想《かわいそう》に」
「それがね、ちょっと違うのですって」
「違う?」
「私たちが奥様だと思っていたあの方、実は殿方《とのがた》だったのですって」
「え? ってことはもしかしてニュースでたまに聞く同性婚というアレですの? 嘘! お綺麗《きれい》な奥様だとばかり思っていましたのに!
嗚呼《ああ》でも、歌舞伎の女形《おやま》なんて女以上に女らしかったりしますわね。そういう感じなのかしら。
あ、でもそれってあのご主人、男が好《す》、」
「そのご主人のほうもね」
「もしかしてそちらが女性?」
「それが犬だったのですって!
それで……奥様を噛《か》み殺した犬っていうのが、」