2019年7月のお題「あう」で書かせて頂きました。
スペース・改行を除く、ルビ及びルビ設定書式を含む300字。
ジャンル:オリジナル
注意書き:魔が差しました。
「第五十五回のお題が発表されました!」
「お題は……”あう”!
”会う”、”合う”、”遭う”、”逢う”等、”あう”の入る言葉、熟語でもOKです!」
「”あ”の次が”う”!?」
「まるで東京の次は大阪公演という、かの有名な”名古屋飛ばし”を彷彿《ほうふつ》とさせる所業《しょぎょう》」
「待て、まだ救いはある! ”あう”の入る言葉ということは ”あ”と”う”の間にこっそり混ざるという手が、」
「事故現場のLIVE中継の後ろでVサインしている学生みたいなことをしろと!? 恥を知れ! そんなこと、俺たち”い”のプライドが許さねぇ!!」
「……やるか?」
「やろう!」
今此処《ここ》に、
飛ばされた”い”の逆襲が始まる――。
スペース・改行・ルビを除く300字。
ジャンル:オリジナル
注意書き:BL両片想い。
湿気を帯びた大気が肌に纏《まと》わりつく。
風鈴はだんまりを決め込み、かわりに、網戸に貼りついた蝉《せみ》が家賃を取り立てる大家の如《ごと》くがなり立てている。
色褪《あ》せた畳が草を主張する。南国には葉で包んで蒸す料理があるそうだが、その料理になった気分だ。
こんな日は西瓜《すいか》に限るときみは言うのだろう。井戸で冷やしたのが一等《いっとう》美味《うま》いと。
買って来ようか。食べきれないから家に寄っていかないかと誘う口実にも、否《いや》、わざわざ買ったと知れば美味《うま》いの前に申し訳ないが来るのがきみだったか。
風が吹く。
蝉《せみ》が飛び立つ。
屋根を叩く音が聞こえてくる。
動かない僕を嘲笑《あざわら》っている。
「――少々、軒《のき》を貸して貰っても?」
ふいに聞こえた声に身を起こすと、笑うきみがいた。