2017年7月(第三十四回)のお題「渡す」で書かせて頂きました。
ジャンル:オリジナル
注意書き:ちょっと鬱展開
スペース・改行を除く300字
STORIE様版あります。
ねえ。
空いっぱいにちぎった綿みたいな雲が並んでる。
あれをヒツジ雲だと言ったきみは、今頃同じ空を見てるかな。
でもきっと「ヒツジ雲だね」と言ったら
「イワシ雲だよ」って返ってくるんだ。
きみはいつもそうだから。
ねえ。
蝉時雨もいつの間にかツクツクホーシに変わってるんだよ。
知ってる?
アブラ蝉はジーって鳴いて、クマ蝉はシャアシャアって鳴いて。
そう言えばヒグラシってどう鳴くんだろう。
「ヒグラシー」とは鳴かないよね。
ねえ。
ヒツジ雲が出ると雨が降るんだって。
風に雨の匂いが混じるの、僕、わかるようになったよ。
夏の雨はいきなり降るんだもの。困るよね。
ねえ。
僕も、もう休みたいよ。
きみだけ先に逝くなんて……ずるいよ。
ジャンル:二次じゃないけど二次っぽい
(宮沢賢治「銀河鉄道の夜」風+アニメ化した某少年漫画)
注意書き:鬱展開・残酷(を連想させる)表現あり
スペース・改行を除く299文字
STORIE様版あります。
「では、この休むという字はどういう形から来ているか、わかりますか?」
皆が手を上げる。
「木の陰で人が休んでいる、という形です」
答えたのはネル。
小さい頃はよく遊んだけど、今はそうでもない。
「先生、どうして人がそんなに大きいんですかー?」
「これは漢字にする際のバランスで……」
人は木の陰で休む。
だから、僕の父さんは村外れの巨木の隣に茶店を出した。
街道でもないのに。
案の定、経営は失敗。
父さんは「客を探してくる」と旅立ったまま戻らない。
「父さんがお客を連れて来るよ」
「巨木みたいな大男を連れて来るよ」
僕は毎日のようにはやし立てられる。
ある日。
巨木のそばに人影が現れた。
その巨人に襲われて、僕の村は全滅した。