2017年2月(第二十九回)のお題「氷」で書かせて頂きました。
ジャンル :オリジナル
注意書き:なし
スペース除く290字。
白く霞んだ窓硝子の外に 、歪な月が浮かんでいる。
その青白い光の下で、枝が窓を 敲いている。
床で鳴る 踵の音が、カリン、と凍って消えていく。
冬が来ている。何度目かの冬が。
私はあなたが好きだった。
笑うあなたが好きだった。
私以外の『誰か』にも、
変わらぬ微笑みを向けるあなたが憎かった。
さあ、魔法をかけよう。
天から白い幕を下ろし、この城を下界から隠してしまおう。
誰にも邪魔されないように。
この世の全てから忘れ去られて、この凍てついた時が永遠になるように。
城と、私と、氷と、あなた。
全てを此処に封じ込めよう。私の愛も、私の心も。
愛しいあなたは今日も眠る。
私の捧げた氷の棺で。
誰も来ない、この城で。