2021年8月のお題「波」で書かせて頂きました。
スペース・改行・ルビを除く300文字。
ジャンル:オリジナル
自作品『6月のオラシオン』のスピンオフ
本編(多分)1年前くらいの夏。”海”でのマーレとヴィヴィの会話。
(→6月のオラシオン)
「これを海と呼べってぇのはレトの怠慢だよ」
ヴィヴィの膝裏で波が白く飛沫を上げている。
「こ・れ・は、プール」
確かにこれは海とは呼べない。波だけは再現しているから流水プール。
でも枯れ果てたこの世界で、何百年も前に消滅した海を再現するにはこれが限界で。
「ヴィヴィ」
「マーレだってそう思ってるくせに」
「進路。海を再生する研究、だっけ?」
ヴィヴィは波を蹴る。
僕たちは海を知らなくて、知らないままで何の問題もなくて。
生きている間には実現不可能な夢に一生を費やすなんて馬鹿なんだろうけれど。
「何千年か後に転生した時を楽しみにしてるよ」
「……水着が似合う生命体に転生しておいて」
「もち」
それを笑わないのはきみだけだ。