2017年6月(第三十三回)のお題「かさ」で書かせて頂きました。
ジャンル:オリジナル
注意書き:二次ネタ有り(二次創作ではありません)
スペース除く300字
STORIE様版あります。
草壁さんはお嬢様だ。
毎朝、黒塗りの車でやって来る。
雨の日は、爺やさんが昇降口まで傘をさす。
帰りも黒塗りの車が正門で待っている。
雨の日は、昇降口で爺やさんが傘をさして待っている。
ある日、昇降口に草壁さんがいた。
外は雨。
爺やさんはいない。
「爺やさんは?」
「まだ……」
「ふぅん」
傘を開くと彼女の肩がびくりと揺れた。
見れば、傘を凝視している。
「なに?」
「な、なんでもない!」
草壁さんはお嬢様だ。
傘は爺やさんがさしかける。
もしかして。
草壁さんは自分で傘をさしたことが、ない?
「さしてみる?」
「いいの!?」
彼女はおそるおそる傘のボタンを押した。
ボン! と鳴るたびに笑った。
トト○みたいだ。
そんなことは、言えない。