2017年5月(第三十二回)のお題「色」で書かせて頂きました。
ジャンル:オリジナル
注意書き:なし
スペース除く300字
STORIE様版あります。
見上げれば青空に白い雲がゆっくりと流れていく。
緑の葉がさやさやと鳴っている。
チューリップは赤、白、黄色って聞いたけど――
ふいに視界がぷつん、と切れた。
余韻も何もなく、僕は真っ暗な空間に放り出される。
『TimeOut』
感情も無く告げるのは娯楽用VR。
名を”彩”と言う。
「もう終わり?」
問うても答えは返って来ない。
当然だ。そんなプログラムは入っていないのだから。
汚染された地表を捨てて人々が地下に新天地を求めたのは、もう何千年も前の話。
”彩”はそんな人々を慰めてきた。
美しい過去の光景で。
でも。
「……きみと僕と、どっちが早く壊れるだろうね」
この世界に順応することを選んだ僕の目は、その役目を忘れつつある。